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熊野参詣の後期のコースであった熊野古道・長尾坂は、田辺湾・白浜を一望できる水呑峠、潮見峠からの眺望を楽しむコースです。
道中には王子社はなく、古道は生活道となったところが多くなっていますが、 長尾坂(ながおざか)・潮見峠越(しおみとうげごえ)の一部が世界遺産には登録されています。
一里塚跡、関所跡、安珍清姫伝説が残る捻木の杉など、古道の雰囲気を残すコースです。

平安時代から鎌倉時代にかけての熊野参詣道は、上皇や貴族を中心に、三栖山王子社から上富田町岡の八上王子社に至る岡越えの道を通り、富田川に沿って水垢離を繰り返しながら滝尻王子に向かいました。しかし、南北朝時代(14世紀)頃より、川沿いの道よりも近道になる、長尾坂から潮見峠を越えるコースが使われるようになりました。
潮見峠から滝尻王子へ下るルートもあったようですが、現在歩くことができるのは、鍛冶屋川口に下って、栗栖川から高原熊野神社へ上るルート。地図上でも最短コースになるので、近世はこのコースがよく使われたのかもしれません。
このコースを歩くには、長尾坂入口付近までタクシーを利用するのが便利です。▶タクシー割引制度について
帰りは「鍛冶屋川口」または「滝尻」バス停からとなります。
歩行距離:約15.8km(下三栖~滝尻王子) 歩行時間:4.5~5時間
最低標高: 約18m(下三栖付近) 最高標高:約540m(潮見峠)
コース紹介
田辺市街地から稲葉根王子に向かう途中、三栖王子の手前から方向を真東にとり左会津川沿いの集落内を「長野」地区に向かっていきます。
尾野原口バス停を過ぎれば、間もなく長尾坂登り口があります。少し上れば地道に入ります。
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地道は1kmほどで、再び舗装路に合流し、集落のなかを歩いていきます。一部は舗装路から外れるところもありますが、再び舗装路に合流する辺りで「関所跡」の石垣が残っています。
細い舗装路の急な登り坂を上っていくと、眺望が良い「ひるね茶屋」があり、秋には見事の紅葉が楽しめます。
ひるね茶屋から少し上ると水呑峠です。 「水呑峠」には茶屋跡があり、今も豊富な水が湧き出しています。茶屋跡のかたわらには「昼寝権現」の小さな社があります。旅人が景色をながめながら休息するうちに寝てしまったというようなことから、この名がついたとされています。 ここからは林道を捻木の杉に向かいます。
捻木の杉
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水呑峠から少し進んだ「捻木峠」には、高さ約20m、周囲約6mの杉の大木があり「捻木の杉」と呼ばれています。
近世の熊野参詣者はこの木を道中の目印にしたといわれており、よくこの木の下で休息したようです。根元には修験道の開祖、役(えん)の行者の石像があります。
また、捻木の杉には安珍清姫の伝説があり、槙山の中腹に差し掛かった清姫は、かたわらの杉に登りはるか前方に逃げる安珍の姿を見つけ、口惜しさのあまり杉の枝を捻じ曲げてしまい、枝はそのままねじれて育ち大木になったということです。
現在は田辺市指定天然記念物。
捻木の杉から少し林道を歩くと、潮見峠への山道に入ります。世界遺産にも登録されている、美しい古道です。
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捻木の杉から2kmほどで、 潮見峠に到着です。少し開けた場所で舗装林道とも交差し、休憩所・トイレがあります。
ここからは「覗橋」に向け、舗装林道を下っていきます。 覗橋を渡れば広い車道に出て、300mほどで富田川沿いの国道311号線に出れば鍛冶屋川口のバス停があります。
高原に向かう場合は、国道を600mほど上流に向かい、原之瀬橋を渡って車道を高原に向かいます。
原之瀬橋から30分ほどで滝尻王子からの古道と交差しますので、古道を歩いて高原に向かうこともできます。
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ウォークマップ
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